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スタッフブログ

幸福のテクノロジー ~ DDIを通して技術が悟る瞬間 ~

Joint-IFF(福岡市のISITを含む福岡県ふくおかISTと北九州市FAISからなる地域イノベーションのための三機関連携体)は、2017年度九州経済産業局事業交付金を受けて、北部九州・山口地域の中小企業16社31名を対象に、人材育成事業「提案力・開発力育成プログラム」を実施しています。ビジネスモデルを共通言語として「攻めの知財」×「ビジネスモデル可視化」×「デザイン思考」を有機的に連動させた企画はおそらく日本では初めてだと思います。丸一日を費やす「人材育成セミナー&ワークショップ」(WS)は全6回のうち、既に「キックオフWS」と「攻めの知財WS」を終え、いよいよ「ビジネスモデル可視化」と「デザイン思考」の計4回のメインセッションに入っていきます。

3つのテーマの有機的連動には、一つの工夫がしてあります。知財創出とアントレプレナー用の事業企画構築フレームとして知られるビジネスモデルキャンパス(BMC)は、価値提案(value proposition)に主眼をおいており、一方の「デザイン思考」はどちらかと言えばユーザ体験をベースにした課題解決型のフレームワークであって、片やWHY始動、片やHOW探索の違いがあります。そこで、初回のキックオフWSでは、今後の高齢化社会に向けた「新しいライフスタイルに即応した事業提案」をチームの課題として予め設定する荒技を使いました。受講者にとっては、かなりハードな取り組みでしたが、課題を最初から小さく絞ることなくビックイシューのまま受け止めることで、疑似的ではありますがWHY始動の流れを作ることができたように思います。

「デザイン思考」は米国で活発に展開されている課題解決型のWSスタイルですが、この他にも、イタリア発の「デザイン・ドリブン・イノベーション(DDI)」という手法があります。こちらは、課題解型(HOW探索)型よりはむしろ新しい意味(WHY始動)の生成型としての特質が顕著で、技術開発との関係の上からも徐々に注目されてきています。日本では、立命館大学の八重樫文教授の研究室が中心になって、DDI概念の日本導入や日本企業に適したDDIネットワークの形成方法についてオリジナリティの高い挑戦が展開されています。掲載した図は、八重樫先生の論文(出典:図下)から僅かですが筆者の手を加えてお示しするものです。今回の人材育成プログラムでは、どちらかと言えば技術主導(偏重)企業からの参加が少なからずありますので、この「技術と新価値(新しい意味)創出の関係図」は、必ずや参考になると思います。そうした期待を含めて、今回のプログラムではデザイン思考とDDIの両方が加味されたデザインWSの形になっていくのではないかと皮算用しています。

先日、WS参加メンバーの有志7名が、ISITの研究室を訪れて、AR(拡張現実感)/VR(仮想現実感)を体験的に学びました。当日は夕方開始でしたが、講師の吉永研究員の説明の上手さと参加者の目的意識の高さが相乗して夜が更ける頃まで大変盛り上がりました。こうした新しい技術の潜在力を彼らがどのように汲み取って、どんな新しい社会文化的波及力のあるビジネスを編み出していくか、とても楽しみにしています。

科学者・技術者が生み出していく技術シーズは、その中身が深ければ深いほど、多くの潜在価値を有しているものです。それを「ヒト」がどのように目覚めさせて、豊かな生活や社会に役立てて行けるか、また、そうして、当初は思いもしなかったような使い方に巡り合う幸運をベルガンティ教授は「技術が悟る瞬間(Technology epiphany)」という言葉で表現しています。研究開発に携わる人間にとって何と励みになることでしょう。