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スタッフブログ

時に愛よりも

恋っていいな、と思った。時に愛よりも。

<枕>
夜 眠れねば 枕とわれ
語りあふ 聞けよ 小まくら
あのひとが好き あのひと恋し

<ひとっ跳びで>
あなたが好きで わたしは来たの
瀧つ瀬も 山も 森も野も
なにひとつ 目にも入らずに

<それにまた・・・>
たんぼから 水がひき
もとの川へと 帰ります
ああ 好いた同士も そうなのね
いつかは別れが 来てしまふ

駐日フランス大使として日本文化に親しんだポール・クローデルが日本の都々逸(どどいつ)の仏訳を独自の詩心で翻案。それを碩学・芳賀徹がもう一度、和訳。・・・いやはや、他の追随を許さない日仏文化の響きあい。

ポール・クローデルはフランスの作家で詩人。また外交官として1921〜1927年まで駐日フランス大使として日本に滞在。姉は彫刻家のカミーユ・クローデル。芳賀徹は比較文学者で渡辺崋山や平賀源内の見事な評伝がある。

冒頭の三つの「フレンチどどいつ」には、それぞれオリジナルの都々逸があり、順に列挙すれば:

<枕> 思い出す夜は 枕と語ろ 枕もの云へ 焦がるるに (初期の江戸)

<ひとっ跳びで> こなた思へば 野も瀬も山も 藪も林も 知らで来た (山城国風)

<それにまた・・・> 五月雨ほど 恋ひ忍ばれて 今は秋田の 落とし水 (九州の里揺)

今は飽きたの落とし水・・・くらい薄情な方が、ストーカー的粘っこさより、よほど「恋」らしいネ。