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スタッフブログ

湯川と夢十夜

本ブログスタッフでもあるT氏に倣い「お勧めですがもう上映していない」映画について書きます。

「容疑者Xの献身」は物理学者と天才数学者の対決ミステリーでした。物理学と数学という難解で世間から敬遠される組合せをよう大衆ドラマにくみこんだなあと言うのが僕の感想でしたが、ある人曰く「あの映画の本当の主役は福山ではなく堤真一やで。ウタ歌い稼業のイケメンに役者一本の堤が対抗して迫真の演技をしてるんやで」。自分の生きる意味に迷い、自殺まで思い詰めていた数学教師が、隣の母子家庭の笑い声に元気をもらい、細々と研究に生を紡ぐ中で巻き込まれた事件。ほのかな気持ちを寄せていた母親の罪を巧妙にかぶっている事を旧友福山に見ぬかれ、彼女の言葉に激泣きするラストの堤の演技は熱かったです。

閑話休題(それはさておき)もうひとつの「お勧めですがもう上映していない」映画は「ユメ十夜」です。容疑者Xとの関連は、、、実はあるのです。福山演じる役の名前をもつ本物の物理学者、湯川秀樹博士の義父は大阪で医院を開いておりました。明治41年、この湯川医院に胃潰瘍で通っていたのが夏目漱石で、その頃夏目が(多分)胃痛にうなされながら、見た夢を書いたのが「夢十夜」です。十の話がありこれを11人の監督が2006年に挑戦したオムニバス映画が「ユメ十夜」です。

実はこのオムニバス映画は玉石混交なのですが、僕の好きな第6夜は逸品です。ふざけた2チャンネル言葉で始まるのですが、実は原作に対するオマージュ(尊敬をもったパクリ)精神に溢れあるいは原作を超えた感覚で迫ってきます。”匠の芸術は彫るのではなく既に中に埋まっている形を掘り出すのだから絶対間違うことはない”という至境の境地を書いた夏目の名作ですが原作はこう始まります。

♠ 運慶が護国寺の山門で仁王を刻んでいると云う評判だから、散歩ながら行って見ると、、、

これが映画では次のような字幕セリフに変わります。

♠ 運慶が、近所の板門前で仁王像のカシラを彫る、なんてことを噂にきいたもんだから、仁王って、んなあ、アフォかと、ヴォケかと、運慶なんぼのもんじゃいと、漏れも芸術家のはしくれ、デブをひきつれ、見物に行くことにした罠 (^_^;)

時代背景は運慶が鎌倉時代なのでしょうが舞台は明治でしょうか「海軍饂飩」なる古風なのぼりが見えます。ここに登場する運慶がいわゆる「毒男」なのでしょう、奇妙な風体、身体を貫くようなテクノ、機械のような彫りダンス。TOZAWAという人らしいです。またブレイクする前の阿部サダヲがいい味を出しています。但し役者の名前のクレジットもふざけていてどこにも知ってる名前はありませんが。

僕が見たのはもう何年も前ですが物好きな方がネットにあげているようです。画質はDVDに落ちますがまずは見てみて下さいませ(後日ですが画質良好の2つ目見つけました。10分そこそこの小品です)。

http://www.youtube.com/watch?v=4q9rCfodvoM

http://www.youtube.com/watch?v=bwztexdi3Hs