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スタッフブログ

夏のドライブと協奏曲

この夏は何度か九州内の日帰りのドライブを妻と愉しみました。かけた音楽で一番いい感じだったのがベートーヴェンのコンチェルトの1番と2番。キーシンのピアノで。どうしてだかわからないのですが、ソロよりも弦楽よりも、若いベートーヴェンが生んだ二つのピアノ協奏曲が、輝く雲を見ながら夏の高速を走るのにピッタリのように感じられたのです、二人とも。

「若いベートーヴェン」で思い出すのは、ボストンにいたころの小澤征爾がルドルフ・ゼルキンを招へいしたときの様子を伝えたBBCの映像。二人がピアノの前で2番のスコアを見ながら、そこここ指さしては意気投合して話し合っている・・・どちらか(たぶんセイジ)が“Young Beethoven!” というと、ゼルキンが我が意を得たように嬉しそうに笑う。そのとき僕は何のことかわからなかったけれど、字幕スーパーには「若くして既に巨匠だ!」と出ていた。そういう雰囲気だったんですね、Young Beethoven!という賞賛は。再生して見直すと、どうも普通だったらフォルテにしてしまうところにその種の記号が一つもないね、He knew! He Knew! なんて言い合って笑っている。彼らの心の中には若いころから晩年までのベートーヴェンがあたかも親友の面影のようにしまわれていて、いつでも所望の時期の彼を呼び出すことができる。指揮者とピアニストで譜面合わせをしているのだけれど、そばにYoung Beethovenを呼び出して「お前はやっぱりたいしたもんだな、若くして既に巨匠だ」なんて、親愛限りなくどやしている感じだったんでしょう。

そんな若い天才の曲を神童と呼ばれたピアニストが知性の抜きんでたオケと奏でるコンチェルトだから、この島の地方ごとに個性ある夏の風景を次々に潜り抜けて疾駆する車の中で聴くのに似合っていないはすはないわけで・・・・いやはや、愉しいドライブになりました。

ヤング・ベートーヴェンのピアノ協奏曲1と2を三枚、推薦しておきます。独身のころ聴いていたのが1、先のBBCの頃の録音が2、今回、車の中で聴いたのが3。どれも絶品。

1.ブレンデル/レヴァイン/シカゴ響(1990)
2.ゼルキン/小澤/ボストン響(2002)
3.キーシン/コリン・デイヴィス/ロンドン響(2008)