ここから本文です

スタッフブログ

“All things in time.” (SF「時間封鎖」)

ある日、地球が暗黒の膜に覆われ、「時間封鎖(SPIN)」される。SPINを仕掛けてきた者の正体は未知。地球人は「仮定体」と呼ぶしかない。

地球の外の時間が1億年流れる間に、地球は1年しか経過しない。結果的に1億倍の強度になる太陽放射を減じる膜のおかげで天空からは月も星も消える。

この「時間傾斜」が生み出すものは、人の一生よりも太陽の命が尽きる方が速いということだ。瞬く間に太陽は膨張し地球を呑みこもうとする・・・

いやはや、アシモフやクラークのような古典的SFとはまた一味違う世界。

ただ読み始めたときは、純真な少年の心象が涼しく、まるでハインラインの「夏への扉」みたいだと懐かしく入って行った・・・

あるネット書評では、この本について「癖のないフラットな文体でサラッと物凄いことを書いていたりするので油断ができない」と書いてあった(http://machine.livedoor.biz/archives/51171376.html)。

僕がそれを感じたのは、地球が反撃に出る決断のシーン:

————————————
違うね。時間は便利に使える道具に過ぎない。
本当に頼りになるのは、生命そのものだ。
自らを複製し、進化し、複雑化していきながら、
全く予想外のやり方で生き延びていく生命。
そんな生命のしたたかさと粘り強さに僕は賭ける。
それで地球は救われるだろうか。わからない。
しかし救われる可能性が生まれてくることは確かだ。
————————————

火星を地球化(テラ・フォーミング)するというのだ。火星にバクテリアを送り込み温暖化ガスで火星を包み、新たな微生物を送り込み大気を酸素化し、植物を更に高度な生物を・・そして植民。

地球の5年は火星の5億年。火星で人類が数十世代更新し独自の文明を築くに十分だ。

火星にうまれた人類と共同して如何に「仮定体」に立ち向かうのか。しかし火星も「仮定体」によって一瞬で「時間封鎖」されてしまう。ああ、どうなる!
(邦訳上巻はここまで。下巻は明日から読み始めます)。

ここで、作者ロバート・チャールズ・ウィルスンの文体について。上巻の三分の一くらい読み進んだところで:

「必要に迫られれば、間に合わないことなんてないさ」

というセリフに出会う。作者のR・C・ウィルスンもさることながら、この本の訳者の茂木健氏の力量にも感服していたので、このステキな言葉は原本ではなんて書いてるんだろう(言語対決!)と、つい気になったのです。

で、それだけで原著(アマゾンで800円強)を買うのもなんだけどなあ、と逡巡しながら、写真の通り入手してしまった次第。で、「必要に迫られれば間に合わないことなんてないさ」とは:

“All things in time.”

なるほど、こんなにも簡潔だったのか。英語という言葉も含蓄が深いんだな。

それにしても、ほんと、びっくりするくらい面白いストーリーです。下巻が愉しみ!