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プロジェクト
エネルギー自立分散

システムデザイン

地域自立システムの素描

ひとつの図を示す。これは、前章で述べたバックキャスト起点:【社会変革チーム】のビジョン形成の下絵となるものである。

前章では、こうしたビジョンの包括的(holistic)な実現は、バックキャスティングによってコンカレントに進めることが可能と述べた。そうした立場から、この図を見れば、三つの輪のうち右下の「ものづくり・発電・移動」の輪が、出入りの活発さと、人々の活動(図では一番下に位置する舟形の囲み)への波及効果の点で最も重要な位置にあることが分かる。経済産業省を中心とした国家産業施策の殆どがここに投資されていることの意味もそこにある。さらに図式的に言えば、一番上の輪は文科省等の支援対象領域に相当し、左下の熱関連技術は上に要素技術的・右に産業連携的に関わる領域となっていて、「ものづくり・発電・移動」の地域産業的領域は、自身を含めたこれら三つを有機的に「人々の活動」に繋ぎ込む役割を潜在的に担っている。

あえて極言すれば、従来型の産業は、このリンケージの部分で「技術の意味を社会につなぐ役割」を幾つかの理由で置き去りにしていたのではないかと(批判的ではなく本当にもったいないことだという心象において)痛感するばかりである。

従って、もはや自明のことながら、この図で唯一強く主張したいのは、「ものづくり・発電・移動」の新しいカタチの提示が「産業を支える技術を身近に捉える」ことを推進し、これが化石燃料や原子力のような集中型大規模システム由来でなく何れ(いずれ)は地域レベルで自給可能なエネルギーと自主資源であることを、人々が彼らの経済活動・生活のスタイル・社会の仕組みの中で透視できるような「合意形成」の重要さである。それを可能にするためにこそバックキャスティングを主張してきたといっても過言ではない。

 

人間中心・地域中心のデザイン思考

この図は、【社会変革チーム】の強力なバックキャスティング・ツールとなる「デザイン思考」のスキームである。右に記した「先行的ユーザー体験(PROACTIVE USER EXPERIENCE)」こそ、地域社会で実現されるべき営みとなるはずだ。

「デザイン思考」とは、IDEO社の先進的取り組みの中で、単なる工業的デザインから脱してビジネスモデルを創発するビジョニング・プロセスとして進化し、下図に示されるように、着想(inspiration)、アイデア化(ideation)、実現(implementation)のルーティンで実施される。ただし、これらは一回きりのルーティンというよりは、螺旋を描くように質的向上を伴って課題がより深く広く理解され、より効果的な結果に到達するまで繰り返される。ルーティンの中央に「人間中心」とあるが、これは、ユーザー一人ひとりが、新しい商品・ザービス・ビジネスによって「自己実現」を体験することを目指していることを示している。

先の図を見れば、「デザイン思考」のメソッドが「バックキャスト思考」と非常に相性が良いことに気づかれたことと思う。下記のような図式的アナロジーを待つまでもなく。

上図の「VISION」は「資源循環型コンビナートの形成」ばかりでなく、地域住民にとっては「産業と生活の新融合」こそが、最重要である。「産業と生活の新融合」の姿が希望を持って見渡せる時こそ、その前段としてバックキャストされる「資源循環型コンビナートの形成」への支持が可能になる。言葉を替えて繰り返して言うならば、「地域中心」・「人間中心」の「自己実現的な生活・社会の質の向上」という本質的なモディベーションが、産業と技術開発に対する合意形成を牽引するように明確なビジョンを提示しなければならない。

そして、「産業と生活の新融合」の中に誰もが希望を託せるようになるための合意形成には、ビジョン(全体像)やグランドデザイン(具体要素)への共感がなければならない。 “Abduction as a Strategy”の章で述べた「新社会プラットフォーム」のコンセプト(例えばデジタルグリッド等)や新しい取り組み(例えば集住・廃校リノベーション・テレワーク等)との整合性を示していくことは一つの方法かもしれない。この部分では、デザイン思考というよりも、価値観や戦略を連想的に捉え直す方法としての「システム思考」などが効果的と思われる。

 

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